大阪地方裁判所 平成3年(ワ)983号 判決 1992年8月28日
原告
前田里江
被告
野口久義
主文
一 被告は、原告に対し、金六四四万四四三五円及びこれに対する昭和六三年六月四日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを三分し、その二を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
四 この判決は、一項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告は、原告に対し、金二〇〇〇万円及びこれに対する昭和六三年六月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、自動二輪車で進行中、対向右折してきた自動車に衝突されて負傷した者が、加害車の保有者に対して自賠法三条に基づき損害賠償を請求した事件である。
一 争いのない事実
1 事故の発生 次の交通事故が発生した。
(一) 日時 昭和六三年六月四日午前一一時五分頃
(二) 場所 大阪狭山市今熊一丁目九六番地先交差点上
(三) 加害車 被告運転の普通乗用自動車(泉五八て八四六〇号)
(四) 被害車 原告運転の自動二輪車(なにわう七七二五号)
(五) 態様 被害車が本件道路を南から北に向けて直進進行中、対向右折してきた加害車と接触して転倒し、原告が右脛骨顆部骨折の傷害を負つた。
2 治療の経過
原告は、本件事故後、次のとおり入通院治療を受けた。
(一) 辻本病院
昭和六三年六月四日(事故日)から同月六日まで三日間入院
(二) 済生会野江病院
同月六日から同年七月一六日まで四一日間入院
同月一七日から平成二年四月二四日まで通院(実通院日数四〇日)
(三) 近畿大学付属病院
平成二年六月一二日から同年一〇月一六日まで通院(実通院日数三日)
二 争点
1 過失相殺
(一) 被告
被告が時速五キロメートル程度の速度で右折を開始したのに対して、原告は、キープレフトの原則に反し当該車線中央よりやや右側を、加害車の動静を見落し(又は見誤り)進行したもので、原告にも相当の過失がある。
(二) 原告
本件事故は、被害車が青信号にしたがい交差点を直進しているところへ、加害車が急に右折したため発生したものである。
2 後遺障害の程度
(一) 原告
本件事故による原告の症状は、平成二年一〇月一六日固定したが、原告には右膝可動域制限(可動域一二〇度)、内反変形一五度、圧痛プラス、回旋動揺と半月板症候あり、大腿周囲径マイナス一・〇センチメートルという症状が残り、正座不能、走行・長歩・長時間起立不能、重量物搬送不可などの困難が生じている。
(二) 被告
看護婦の平均賃金が名目で月額二二万〇五〇〇円であるのに対し、原告は手取りで二〇万四五〇〇円の収入を得ており、減収は生じていない。また、原告の後遺障害は、神経症状にとどまるものであるし、原告は通常ハイヒールを履ける状態にあることからせいぜい五年残存する程度のものと考えられる。
4 その他損害額
第三争点に対する判断
一 事故状況などについて
1 事実関係
前記争いのない事実に証拠(甲一の三ないし七)及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。
(一) 本件事故現場は、ほぼ南北に通じる道路(市道)と東西の通じる道路の交差する交差点内である。この交差点には、押しボタン式信号が設けられているが、ボタン操作をしない限りは南北道路信号は、青色を表示したままの状態となつている。
南北道路の車道は、片側一車線で、車道端から一・五メートルのところに引かれた車道外側線によつて区画された通行帯の幅員は、片側三・〇メートルである。また、車道の両側には、幅員三・五メートルの歩道が設けられている。一方、本件交差点東側の東西道路は、片側一車線(幅員三・五ないし七メートル)で、その北側には幅員一・五メートルの歩道が設けられている。
本件事故現場付近の道路は、いずれも平坦にアスフアルト舗装されており、本件事故当時路面は乾燥していた。
本件道路の最高速度は時速四〇キロメートルに制限されている。
(二) 被告は、加害車を運転し、本件事故現場の北側から本件交差点に至つた。一方、原告は、被害車を時速約四〇キロメートルで運転し、本件事故現場の南側から本件交差点に至つた。
そして、被告は、本件事故現場手前二三・七メートル付近(<1>)で右折合図をし、手前四・三メートル付近(<2>)で一時停止し、対向直進車両をやり過ごした後、対向車がとぎれたものと誤信し、右折するため加害車を発進させたところ、手前一・六メートル付近(<3>)で直進進行中の被害車を一三・八メートル離れた<ア>に認め、危険を感じて急ブレーキをかけたが、本件衝突地点(<×>)において、加害車の前部中央に被害車の前部が衝突する形で衝突し、被害車は同所付近(<ウ>)に転倒し、加害車は衝突地点に停止した。
一方、原告は、本件交差点手前で、右折の指示器を出して停止中の加害車を認めたものの、そのまま待つてくれるものと考えてそのまま直進を継続した(原告は、本人尋問において、加害車を認めて減速したと供述するが、同人の捜査段階における供述(甲一の六・四項)に照し信用しない。)。ところが、加害車が進行を開始したためブレーキをかけたが間に合わずに衝突した。
(三) 本件事故により、加害車の前部バンパー、グリル、ボンネツトが凹損し、被害車の前輪フエンダー、カウリング、右側面カウリング、ハンドル右側が擦過した。
2 判断
以上の事実によれば、本件事故の原因は、被告が、対向直進車の有無を十分に確認しないまま、右折を開始しようとしたことにあることは明らかで、被告の過失は大きいといわなければならない。
しかしながら、原告としても、右折を行なおうとしている加害者を認めながら、その動静を十分確認しないまま、そのまま直進を行なおうとしたもので、被害者である原告にも一定の過失があるといわざるをえない。
そして、右認定事実から認められる双方の過失の内容、程度、衝突場所の道路状況等を考慮すると、原告の過失は二割程度と認めるのが相当である。
二 後遺障害の程度などについて
1 前記争いのない事実に、証拠(甲四ないし甲一五、甲三一の二ないし六、原告本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実を認めることができる。
(一) 原告は、本件事故により、右脛骨顆部骨折の傷害を受け、昭和六三年六月四日、辻本病院に入院し、同病院において、右膝穿刺などの処置を受け、同月六日済生会野江病院に転院した。
(二) 済生会野江病院初診時において、膝関節痛があり、腫張を伴う状態であつた。同病院においては、同月六日から同月二八日まで、ギプス固定がなされ、同日ギプスは支柱付きサポーターに変更された。そして、同年七月一四日から二〇キログラム荷重による歩行が開始され、同月一六日両松葉杖の状態で退院となつた。その後、同月一七日から平成二年四月二四日まで通院(実通院日数四〇日。平成元年四月以降の通院は、平成元年八月二回、一〇月一回、平成二年四月一回)により、癒合状態についてのチエツク及び筋力維持及び増強訓練を目的とする理学療法(なお、その処置料は一回当たり一三五点である(甲九)のに、昭和六二年一二月一日以降はそれが九四五点しか計上されていないこと(甲一一)から考えて、同日以降においては七回行なわれたに過ぎないものと推認される。)がなされた。この間、原告は右関節痛を訴え、医師は右下肢に過度な負担のかかる肉体労働に支障があるとし、原告に太らないようにとの指示を行なつた。
なお、被告加入の自動車共済の照会に対する回答書(平成元年四月二日付)によれば、レントゲン写真上、原告の右脛骨外側顆部には、軽度の陥没骨折(乙三の二・一一丁によれば、二ミリメートルのおちこみとされている。)による変形治癒が認められ、これにより将来的に右変形性関節症が生じる可能性もあるとされている。また、カルテ上、屈伸時、軋轢音がすると記載されている。
(三) 原告は、平成二年六月一二日から同年一〇月一六日まで近畿大学付属病院に通院した(実通院日数三日)。同病院医師は、原告に対して、原告がその当時、現に使用していたのと同じシンプソン装具の装着を指示したが、原告が、それでは痛みが防げないと述べたため、ドンジヨイ装具の装着を指示した。
(四) 近畿大学付属病院医師は、平成二年一〇月一六日、<1>傷病名を右脛骨顆部骨折、右動揺膝、<2>検査結果として、可動域制限(可動域一二〇度)、内反変形一五度、圧痛プラス、回旋動揺と半月板症候あり、大腿周囲径マイナス一・〇センチメートル、装具使用中、<3>見通しとして、右膝の機能障害を残し症状固定とする後遺障害診断書を作成した。
(五) 原告は、平成四年六月二二日の原告本人尋問期日当時、皮膚科の病院において、看護婦として稼働しており、シンプソン装具を付けなくても膝折れの症状が生じることはないが、疼痛の発生を予防する意味で、勤務中のみ、シンプソン装具を付けている状態にあり、尋問当日には、高さ二、三センチメートルのハイヒールを履いていた。
2 右認定の事実を前提として、原告の後遺障害の程度について検討するに、原告の膝関節については、脛骨外側顆部の軽度の陥没変形、関節痛の他、可動域制限や動揺膝などが生じていることが認められることになる。しかしながら、可動域制限の程度は比較的少なく、また、動揺膝もそれを抑制するための装具の装着を必要としない程度のものであつて、これを自賠法施行令にいう膝関節機能の制限としてとらえることはできず、原告の症状は、脛骨外側顆部の軽度の陥没変形に由来するがん固な局部の神経症状としてとらえられるべきことになる。
三 損害について
右で認定、説示したことを前提として、原告の損害について判断する。
1 治療費(請求額二五万七四八〇円) 二五万七四八〇円
辻本病院及び野江病院における原告の治療費として右金額を必要としたことは、当事者間に争いがない。
2 療養費(請求額一二万二三三八円)
原告は、合計四三日間入院を要したので、その間、入院雑費として一日当たり一三〇〇円の割合による五万五九〇〇円を要したものと認められる。
また、甲二三、甲二四によれば、原告の装具(支柱付きサポーター)代として一万〇九〇〇円を要したことを認めることができる。
したがつて、原告の療養費としては、右合計六万六八〇〇円の限度で本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当であり、甲二五中、右金額を越える部分については、本件事故と相当因果関係のある損害とは認められない。
3 就学資金返還による損害(請求額八二万五〇〇〇円) 三七万四九六二円
甲二七、甲二九、甲三〇及び原告本人尋問の結果に前認定の入通院経過を総合すれば、原告は、本件事故当時、近畿大学付属高等看護学校に在学中であり、平成元年三月に同校を卒業する予定であつたこと、ところが、本件事故による入通院のため主として実習単位の取得が不能となつて一年間休学し、平成二年三月卒業したこと、原告は、同校在学中(休学年度を除く)、月額二万五〇〇〇円(合計九〇万円)の就学資金の貸与を受けていたこと、この就学資金については、同校卒業後引き続き貸与を受けた期間に相当する期間以上同大学医学部付属病院において業務に従事したときには、同病院の定める就学資金貸与規程(甲二七)九条の規定により返還債務の免除が受けられるものとされていたこと、原告は、同校卒業後、同病院整形外科病棟において、看護婦として勤務を開始したこと、その業務内容には動けない患者の体位の変換、保清など下肢に負担のかかるものが含まれていたこと、平成二年六月に装具を替えたが、なお膝の痛みが続いたため、原告は、婦長に相談の上、退職し、同年八月二日、勤務した三か月分に相応する七万五〇〇〇円を控除した就学資金八二万五〇〇〇円を返還したことなどの事実を認めることができる。
そして、右事実関係のもとにおいては、右就学資金は、相当程度の蓋然性をもつて返還債務の免除を得られる性質のものであつたということができるから、右退職と本件事故との間に相当因果関係が認められるのであれば、右返還債務の免除を得られなくなつたことは、本件事故による損害ということになるところ、原告の退職は、本件事故による傷害による疼痛の持続を原因としてなされたものであり、また、そのことは、その傷害の程度や仕事に与える影響などから考えて、通常人にとつても、予測することもできない希有の事例であるということはできないから、本件事故と退職との相当因果関係があるというべきである。
もつとも、退職には、本人の自由意思が関与しているものであり、また、原告の障害は、局部(膝関節)のがん固な神経症状であつて、医師としては右下肢に過度な負担のかかる肉体労働に支障があるとしつつも、看護婦としての就労は不能であると判断しておらず、退職以外の選択がありえない状態とは考えられないことなどを考えると、退職によつて生じた右損害の全てを本件事故によるものとして被告に負担させることは損害の公平な分担という損害賠償の理念に照して相当ではなく、この点については、過失相殺に準じて賠償すべき損害額を減額するのが相当であり、本件においては、通常人が同一の状態におかれた場合に退職を選択する可能性などを考慮し、五割を減額するのが相当である。
なお、被告は、本件就学資金には、特別免除の制度があるのに、原告が、この適用を受けず就学資金の返還をしてしまつたことを、相当因果関係が認められるべきでない理由として主張するが、右特別免除は、前記業務従事による免除と異なり、理事長の自由裁量に属するものとされていて(甲二七・一〇条)、免除を得られることが、蓋然性の程度にまで確実なものとは認められないから、この点に関する被告の主張は採用できない。
そこで、右返還を行なつた就学資金の金額に前記五割を乗じ、更に、右返還を行なつたのが本件事故日から二年あまり後であることから二年の期間につき、ホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して本件事故当時の現価を算出すると、次のとおり、三七万四九六二円(円未満切り捨て、以下同様)となる。
(計算式)
825000×0.5×0.9090=374962
4 留年中の学費(請求額三五万二〇〇〇円) 二三万二〇〇〇円
原告は、休学となつた昭和六三年度に払込んだ学費二〇万円、修学旅行費一二万円、実習費三万二〇〇〇円が右損害であると主張する。
そのうち、前期分の学費一〇万円及び実習費三万二〇〇〇円については、それが本件事故による損害となることについては当事者間に争いがない。
被告は、後期分の学費一〇万円については休学したのであるから、支払う必要のない費用であると主張するが、その免除がなされる蓋然性についての立証がない本件においては、原告がその支払義務を免れていたものと認めることはできないもので、本件事故による損害と認めざるを得ない。
他方、修学旅行費については、その返還の受けられない理由について、具体的な主張立証がなく、本件事故と相当因果関係のある損害とは認められない。
したがつて、学費二〇万円及び実習費三万二〇〇〇円の合計二三万二〇〇〇円が右損害となる。
5 留年による得べかりし賃金(請求額三四〇万六一八八円) 三二四万三七一二円
甲二八及び原告本人尋問の結果によれば、高等看護学校における原告の同級生は、全員近畿大学付属病院に就職したこと、同病院に就職した場合の初任給は、昭和六三年度において、月各四回の準夜勤・深夜勤手当月額二万七二〇〇円を含め、年額三四〇万六一八八円とされていることが認められ、これによれば、卒業後、原告が右年収額を得られる蓋然性が高かつたということができる。
そこで、前記本件事故による休学により、卒業が遅れた一年間につき右年収額を算定の基礎とし、ホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して、本件事故当時におけるその現価を算出すると、次のとおり、三二四万三七一二円となる。
(計算式)
3406188×0.9523=3243712
6 逸失利益(請求額一四二九万九二〇〇円) 三二〇万八六九〇円
原告の右膝関節に疼痛などの障害が残存したことは前認定のとおりである。そして、右後遺障害は、後遺障害別等級表一二級一二号に該当するものであるところ、前記認定の障害の部位や程度、原告本人尋問の結果によつて認められるように、日勤の看護婦として勤務している原告の収入が平成四年六月当時で手取りで月額二〇万四五〇〇円程度であること、これに対し近畿大学付属病院において勤務を継続した場合には、月額二万七二〇〇円程度の準夜勤・深夜勤手当を得られた蓋然性が高いことなどを考え合わせた場合、原告(昭和四二年一〇月一四日生、本件事故当時二〇歳、甲一の六)は、この後遺障害により平成元年四月(当時二一歳)に治療がほぼ終了した後三一歳に達するまでの一〇年間にわたり平均してその労働能力の一四パーセントを喪失し、それに相応する財産上の利益を失つたものと認めるのが相当である(ただし、平成二年三月(当時二二歳)までの分は、留年による損害として計上済み。なお、被告は、平成三年賃金センサスによる看護婦の平均賃金が名目二二万〇五〇〇円であるところ、被告は手取りで二〇万四五〇〇円であることから原告については減収がないと主張するが、右センサスによる年収額が賞与など特別支給額五〇万二八〇〇円を含め三一四万八八〇〇円であるのに対し、原告は、前記認定のように、初任給として、三四〇万六一八八円を得る可能性が高かつたものであるから、この点に関する被告の主張は採用できない。)。
そこで、前記見込収入額三四〇万六一八八円を算定の基礎とし、ホフマン式計算法(ただし、用いるホフマン係数は、事故時から三一歳までの全期間に相応するホフマン係数と事故時から二二歳に達するまでの期間に相応するホフマン係数の差)により年五分の割合による中間利息を控除して後遺障害による逸失利益の事故当時における現価を算出すると、次のとおり三二〇万八六九〇円となる。
(計算式)
3406188×0.14×(8.5901-1.8614)=3208690
7 慰謝料(請求額五〇〇万円) 三〇〇万円
以上に認定の諸般の事情を考慮すると、本件事故による慰謝料としては三〇〇万円(入通院分一〇〇万円、後遺障害分二〇〇万円)が相当であると認められる。
(以上1ないし7の合計額は、一〇三八万三六四四円である。)
8 過失相殺
前記認定の原告の過失割合二割を過失として斟酌し、以上に認定の損害額から減ずるとその残額は、八三〇万六九一五円となる。
9 損益相殺(主張額二七六万八八五六円) 二四六万二四八〇円
被告が原告に対して三万五〇〇〇円を、辻本病院に対して七万八一六〇円、野江病院に対して一七万九三二〇円を支払つたこと、被告加入の自賠責保険会社が原告に対して二一七万円を支払つたことは当事者間に争いがない。
被告は、更に、社会保険者である大阪市に対して、野江病院における原告の治療費の求償分として三〇万六三七六円を支払つたと主張するが、この点は損益相殺としては考慮しない(この損益相殺を行なうとすれば、その前提としてその求償の前提となる社会保険負担分の治療費を本件損害に算入すべきことになるが、その治療費を算入したとしても、同額の社会保険給付が、過失相殺を行なう前の原告の損害から控除されるべきことになるだけで、損益相殺後の結論的な金額には差異は生じない。)。
(以上、損益相殺後の残額は、五八四万円四四三五円である。)。
10 弁護士費用(請求額一五〇万円) 六〇万円
本件訴訟の審理経過及び結論によれば、本件事故と相当因果関係にある弁護士費用相当の損害額は、右のとおり認めるのが相当である。
以上によれは、本訴請求は、本件交通事故に基づく損害賠償として、被告に対し、六四四万円四四三五円及びこれに対する不法行為の日である昭和六三年六月四日から支払い済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があり、その余は理由がないことになる。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 松井英隆)
別紙 <省略>